編: 桜城蘭
マリオカート ~世界的キャラクターが織りなした、革命的なレースゲーム~
はじめに
世界的キャラクターであるマリオたちが銘々のレーシングカートに乗り込み、順位を競うレースゲーム「マリオカートシリーズ」は、2020年(令和 2年)時点で累計販売数1憶5千万本1を超える、超人気作品です。任天堂を長年支えるローンチタイトル(新しくゲーム機が販売される際、同時に発売されるゲームソフト)2として、10作品が発表されています。3
レースゲームとして革新的であったのは、そのゲームシステムです。
アイテムを用いて競争相手を妨害する要素を取り入れたことで、戦略の幅が広がり、また順位の変動が激しいレース展開が繰り広げられるようになります。
どちらかと言うと玄人ゲーマー好みであったレースゲームにキャッチーさを加え、ゲーム初級者~中級者に対して門戸を広げた意味で、マリオカートはレースゲーム史において重要な位置を占めています。アイテム使用、ゲームキャラがレースをするといった要素は、その後様々なフォロワーを生み出しました。
今回は「マリオカートシリーズ」と、関連する展示品についてご紹介します。
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マリオについて
マリオカートの説明する前に、まずはマリオそのものについて触れていきたいと思います。
マリオは元々、任天堂が1981年(昭和56年)に発売したアーケードゲーム「ドンキーコング」の主人公でした。4当初は名前がなく、‘ジャンプマン’や‘救助マン’5、‘ミスター・ビデオゲーム’6の名で呼ばれていました。
「ドンキーコング」の続編、「ドンキーコングJR.」に登場した際、‘マリオ(Mario)’と名付けられます。
名前の由来となったのは、イタリア系アメリカ人のマリオ・セガール氏です。任天堂の米国法人(Nintendo of America(NOA))が借りていた倉庫のオーナーだったセガール氏は、後のマリオとなる無名の主人公と似た特徴を有しており、NOAの家賃滞納に対する口煩さと容姿を半ば揶揄、半ば親しみを込める形で、社員間ではドンキーコングの主人公を‘マリオ’と呼んでいたそうです。7
その後1983年(昭和58年)に発売された「マリオブラザーズ」で、双子の弟・ルイージと共に本格的なデビューを飾ることになります。以降の人気ぶりは周知の通りで、マリオ関連のゲームは2020年(令和2年)時点で累計5億6千万本以上を売り上げます。8
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マリオカートの誕生 ~「F-ZERO」との意外な関係~
マリオカートは、‘2人用の「F-ZERO」を作ろう’とのコンセントの元、開発が進められました。9「F-ZERO」は1990年(平成2年)に任天堂から発売された家庭用ゲーム機「スーパーファミコン」(以下、SFC)のローンチタイトルであり、ファミコンから大きく進化したSFCのハード性能を遺憾なく発揮したレースゲームでした。10背景の回転、拡大、縮小機能が搭載されたことで、より没入感を得られるゲーム体験を可能としたのです。11
ただ「F-ZERO」は1人用のレースゲームであったこともあり、コントローラが2人分あるSFCの魅力を活かすためにも、冒頭のコンセプトが出たそうです。12
しかしハード面の制約で、「F-ZERO」のような長い直線コースを2画面表示するのは不可能であることが判明すると、真四角のマップに収まるレベルの曲線主体のコースが出来上がりました。必然、フォーミュラカーのようなレースカーは使えず、比較的速度の遅いカートが採用されます。13
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マリオカートの誕生 ~原点にして頂点の初代マリオカート~
この段階ではマリオのキャラクターたちにレースをさせる案は全く出ておらず、開発時にはつなぎを着て色違いのヘルメットを被った無名のキャラたちを走らせていました。
ところがドット絵の描写力の限界もあり、前述の無名キャラたちをただ走らせるだけでは見分けが付かず、何より面白くありませんでした。そこでマリオたちをドライバーにしてテストプレイしたところ、好感触を得たことで、「マリオカート」が誕生することになります。
また画期的なアイデアであったレース中のアイテム要素は、元々無名キャラを走らせていた際に採用された、妨害装置としてオイル缶を後方に投げられるシステムが元となっています。初代マリオカートのキャラにドンキーコングJrが居たこともあり、オイル缶の代わりにバナナの皮が採用されました。ちなみに初代マリオカートでは、プレイヤーキャラ以外にバナナの皮を使うのはドンキーコングJrのみであり、その他のキャラは特徴に基づいたアイテムを使用してきます。
その後も開発陣は、前方に攻撃するアイテムとしてミドリ甲羅、誘導機能が付いているアカ甲羅、大逆転要素を含んだサンダーなど、後年のマリオカートシリーズでお馴染みのアイテムを確立させます。14
マリオカートシリーズの要素を決定づけた「スーパーマリオカート」(1992年(平成4年)発売)が、如何に完成度の高いゲームであったかがよく分かりますね。
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展示品紹介
当館に所蔵されているマリオカート関連の展示品の一部を紹介します。
写真1枚目左手前のマリオ、写真2枚目手前から2列目の右に映っているドンキーコングJrのフィギュアは、1992年(平成4年)に発売されたマリオカートシリーズの第1作目、「スーパーマリオカート」のものです。時代柄なのか、他のフィギュアと比べると何とも大味な出来上がりですが、そこが魅力でもあります。
ドンキーコングJrは、「ドンキーコング」の続編である「ドンキーコングJr.」の主人公であり、読んで字の如く、ドンキーコングの息子という設定です。……が、現在では大変不遇な扱いを受けているキャラと言えます。
1981年(昭和56年)に稼働が開始した「ドンキーコング」の主役が初代ドンキーコング、その息子がドンキーコングJr、そして初代ドンキーコングの孫が現行のマリオシリーズに出てくる2代目ドンキーコングという設定になっています。(ドンキーコングJrと2代目ドンキーコングが血縁関係にあるのかは不明)
初代ドンキーコングは白髪の長老「クランキーコング」として、ドンキーコングシリーズに出演しています。
しかしマリオシリーズやドンキーコングシリーズの新作が出る度に前述の設定はあやふやなものになっていき、2023年(令和5年)に公開された映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」では、クランキーコングの息子がドンキーコングとして扱われています。15
何故「スーパーマリオカート」ではドンキーコングではなくドンキーコングJrが起用されたのかは当時の開発陣もよく覚えておらず、「シャツを着ているキャラなので、ドット絵でデザインした際に他キャラと判別しやすいだろう」との理由だったのではないかと語っています。(ちなみに「スーパーマリオカート」の発売年は「ドンキーコングJr」の10周年目であり、そのことも後付けで起用理由にされたそうです)16
ドンキーコングJrがマリオカートシリーズに登場したのは、「スーパーマリオカート」と「マリオカート ツアー」(2019年(令和元年)にリリースされたスマホ向けアプリ)のみであり、大変貴重なフィギュアと言えます。17
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最後に
「マリオカートシリーズ」の歴史について取り上げましたが、いかがでしょうか。
今後もマリオカートは、任天堂が新しいハード(ゲーム機)を発表する度、ローンチタイトルとして新作が出ていくことでしょう。友人、家族、恋人などとワイワイ楽しめるレースゲームであるマリオカートの魅力が、少しでも伝われば嬉しいです。
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- USJ任天堂エリアは「マリオカート」を現実に その仕掛けとは:日経クロストレンド ↩︎
- ローンチタイトル – Wikipedia ↩︎
- 2024年(令和6年)現在 ↩︎
- マリオ (ゲームキャラクター) – Wikipedia ↩︎
- ドンキーコング – Wikipedia ↩︎
- マリオ (ゲームキャラクター) – Wikipedia ↩︎
- マリオ (ゲームキャラクター) – Wikipedia ↩︎
- USJの新エリア 外国人客の取り込み狙う|読売テレビニュース ↩︎
- 「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」発売記念インタビュー 第4回「スーパーマリオカート篇」 | トピックス | Nintendo ↩︎
- F-ZERO – Wikipedia ↩︎
- スーパーファミコンが発売30周年。拡大・縮小・回転機能を搭載したファミコンの後継機で数々の名作を生み出した【今日は何の日?】 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com ↩︎
- 「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」発売記念インタビュー 第4回「スーパーマリオカート篇」 | トピックス | Nintendo ↩︎
- 「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」発売記念インタビュー 第4回「スーパーマリオカート篇」 | トピックス | Nintendo ↩︎
- 「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」発売記念インタビュー 第4回「スーパーマリオカート篇」 | トピックス | Nintendo ↩︎
- ドンキーコングJr (どんきーこんぐじゅにあ)とは【ピクシブ百科事典】 ↩︎
- 「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」発売記念インタビュー 第4回「スーパーマリオカート篇」 | トピックス | Nintendo ↩︎
- ドンキーコングJr (どんきーこんぐじゅにあ)とは【ピクシブ百科事典】 ↩︎
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