編: 桜城蘭
チョコボール・キョロちゃん・おかしのカンヅメ
~食べて美味しい、当たって嬉しい、お菓子とおもちゃとおんどりと~
はじめに
創立から100年以上の歴史がある老舗菓子メーカー、森永製菓1が手がけるチョコレート菓子である『チョコボール』は、販売開始から実に60年以上が経ちます。2
ピーナッツ、キャラメル、いちご味を主軸とした球形のチョコレートを、箱上部にあるくちばし口を開いて手元にころころと出して食べたことは、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
チョコボールを語るうえで忘れてはならないのが、マスコットキャラクターの『キョロちゃん』と、くちばし口に一定数印刷されている‘金のエンゼル’と‘銀のエンゼル’を集めて貰える、『おもちゃのカンヅメ』です。
キョロちゃんはチョコボール販売当初からのマスコットキャラクター3であり、単独のアニメ作品もある4など、お菓子の枠組みを超えて今なお愛され続けています。
おもちゃのカンヅメはその名の通り、缶入りのオリジナル玩具詰め合わせであり、‘金のエンゼル’は1枚、‘銀のエンゼル’は5枚で引き換えられる景品です。おもちゃのカンヅメの前身であるまんがのカンヅメが1967年(昭和42年)に登場して以来、現在まで続いています。5今回は、当館に多数の展示品がある『チョコボール』、『キョロちゃん』、『おかしのカンヅメ』の歴史を紹介します。
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チョコボールの誕生と発展
1965年(昭和40年)、チョコボールの前身である『チョコレートボール』が販売されました。6
昭和30年代に急激に成長したチョコレート市場には、国内、海外のチョコレートメーカーが鎬を削って世に送り出した、多種多様な商品で溢れていました。森永製菓は1964年(昭和39年)に、大人向けチョコレート商品『ハイクラウンチョコレート』を生み出し、一大センセーションを巻き起こすことに成功しています。7チョコレートボールはハイクラウンチョコレートの成功を踏まえ、子供向けチョコレート市場を押さえるための一手として開発された商品です。8
1969年(昭和44年)には、チョコレートボールは現在の『チョコボール』に改称されます。9
チョコボールのパッケージの特徴と言えば、やはり箱上部にあるくちばし型の取出口でしょう。このようなパッケージデザインになったのは、食べやすさを考えた末の商品設計に由来しています。
チョコレートは手で摑むと、体温によって溶け、指に付着することがあります。これを解消するために、チョコボールはピーナッツやキャラメルをチョコレートで覆い、更につや掛けを施しています。この工夫によって中袋を用いて個別包装をする必要がなくなり、また球形であるために、小口の取出口でも取り出しやすくなりました。10商品の美味しさは当然として、子供たちの心を惹かせるにはやはりもう一工夫が必要……という考えの元、このような‘開けて楽しい’個性的なパッケージデザインが出来上がりました。11
ちなみにチョコボールの当初のパッケージデザインは、箱上部を上に引き上げると横からくちばし口が飛び出てくるものでした。その後1974年(昭和49年)に箱上部のくちばし口のみを引き上げる方式に変更され、現在に至っております。1213
また、パッケージデザインが確立した前年の1973年(昭和48年)には、レギュラーフレーバーとしてピーナッツとキャラメルが選定されており、こちらも現在に至るまで変更はありません。14パッケージ、フレーバー共に半世紀以上変わらず愛されているのは、それだけチョコボールの商品としての完成度が高い証拠だと言えます。
小鳥を彷彿とさせるパッケージデザインを完成させたチョコボール開発陣は、マスコットにも小鳥をモチーフにしたキャラクターを採用することにします。そうして生まれたのが、キョロちゃんです。15
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キョロちゃん
小鳥を思わせるパッケージに合わせて誕生したマスコットキャラクター、『キョロちゃん』は、何とも前衛的なデザインでした。
名前の由来でもあるキョロキョロとした大きな目と、黄色いくちばし、胴体はアーモンドといった出で立ちですが、羽根らしきものは見当たりません。違和感を抱かせるのは、その大きな目です。全体的には横向きであるにも関わらず、目が正面に2つ並んでいるのは、あのピカソで有名なキュビズムの‘同存化表現’という、平面上に立体を強調する絵画手法によるものです。16
実は今でこそ人気のキョロちゃんですが、かなり攻めたキャラクターデザインが災いしてか、販売当初の社内での評判はあまり芳しいものではなく、‘キョロちゃん’という名前が付けられたのも1991年(平成3年)になってのことでした1718。その後はご存じの通り、チョコボールの看板キャラとして人々に愛され続けています。
ちなみにキョロちゃんは計3人(※森永製菓の公式での単位)居り、最もスタンダードなカラーリングであるのは、ピーナッツキョロちゃんです。他には通年販売されているフレーバーと対応しているキャラメルキョロちゃん、いちごキョロちゃんが居ます。(前2人は男の子、いちごキョロちゃんは女の子という設定です)19
3人のキョロちゃんたちは、2013年(平成25年)にはヒャダインこと前山田健一氏のプロデュースにより、『キョロちゃんズ』としてアイドルデビューも果たしています。20
また同年には比較的縦長だったキョロちゃんのデザインが丸みを帯びたものに変更され、より親しみ深い造形になりました。21
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おもちゃのカンヅメ
チョコボールを語る上でキョロちゃんと並んで外せないのが、『おもちゃのカンヅメ』です。購買意欲を促進するため、子供たちの収集癖を上手く捉えた販促活動の一環として始まり、これもまた現在に至るまで続いているキャンペーンです。
1967年(昭和42年)、漫画のミニ本(豆本)が入った『まんがのカンヅメ』が登場します。その2年後、小さな文房具や玩具が入った『おもちゃのカンヅメ』に変更されました。22
商品に付属している応募券を集めると景品が送られてくるキャンペーンは珍しいものではないですが、おもちゃのカンヅメの特異性はその期間と豊富なバリエーションです。半世紀以上に渡り一度もキャンペーンを中断することなく、2年に1回のペースで中身やカンヅメの形状を変えており、月平均で約2万個のおもちゃのカンヅメを当選者に発送しています。23
また応募券である‘金のエンゼル’、‘銀のエンゼル’の出現率にも妙があり、前者は相当な低確率であるものの、後者は比較的出やすく、景品としてのプレミア感を損なわぬままに、頑張れば手が届きそうなラインが設定されています。24
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最後に
森永製菓のお菓子『チョコボール』と、マスコットキャラクターの『キョロちゃん』、景品の『おもちゃのカンヅメ』を取り上げましたが、いかがでしたでしょうか。
半世紀前に登場して以来、味、キャラ、コレクション性で子供たちを魅了し続けている『チョコボール』は、これからも時代と共に変わり続け、そしてあくまで根幹は変わらないまま愛されていくことでしょう。
当館には『チョコボール』の歴代パッケージ、『キョロちゃん』関連のグッズ、『おもちゃのカンヅメ』が展示されております。是非一度、ご自身の目でご覧になってください。
- 明治・大正 | 沿革・歴史 | 企業情報 | 森永製菓株式会社 ↩︎
- チョコボールヒストリー|森永製菓 ↩︎
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- キョロちゃん | バンダイチャンネル|初回おためし無料のアニメ配信サービス ↩︎
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- 森永の歴史年表 ↩︎
- ハイクラウンチョコレート ハイセンス&ハイクオリティ〜質の時代への挑戦〜 ↩︎
- 森永製菓 チョコボール ニッポン・ロングセラー考 – COMZINE by nttコムウェア ↩︎
- チョコボールヒストリー|森永製菓 ↩︎
- 森永製菓 チョコボール ニッポン・ロングセラー考 – COMZINE by nttコムウェア ↩︎
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- チョコボールヒストリー|森永製菓 ↩︎
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- チョコボール|森永製菓 ↩︎
- 「チョコボール」の「キョロちゃん」が大幅なリニューアル アイドルダンスユニット『キョロちゃんズ』としてメジャーデビュー決定! ↩︎
- チョコボールヒストリー|森永製菓 ↩︎
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- 森永製菓 チョコボール ニッポン・ロングセラー考 – COMZINE by nttコムウェア ↩︎
- 森永製菓 チョコボール ニッポン・ロングセラー考 – COMZINE by nttコムウェア ↩︎
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